飲食店の賄いで一番人気のあるメニューと言えば、皆さん何を思い浮かべるでしょうか。
賄いと一言にいってもお店によってルールは色々で、スポンサーリンク
中にはお店のメニューを実際の販売価格の半額とかで食べれる様にしているお店もありますが、ここではあくまで無料で、調理人さんがお店の食材を使って作るオリジナル料理に限らせて頂きますね。
これまた業態によって色々で、パスタ専門店やら、カフェ系だと白御飯が無いのでかなり種類が狭まったりするのですが、大体の居酒屋、定食などの和食系ではカレーが一番人気だったりします。
一番まとめて作りやすいし、前日から仕込めるし、大体の人は好きですから。
ところがうちの店では調理長よりカレー禁止令が出され、カレーはその日以来、封印された賄いメニューとなりました。
なかなかその賄いカレーは主婦のパートさんからも絶大な支持を受けてました。アルバイトのシフトが入ってない人からも、そのカレーを食べる為に出勤したがるスタッフが出るくらいでした。
ルーは普通の業務用のもので大した事は無いのですが、その具材が、メニューの山形牛の端材の部分や、比内地鶏のつくねの賞味期限が近いもの、野菜は契約農家の無農薬野菜の端材、そして店で使っているお出汁をカレーに投入します。
また、通常メニューの消費期限の切れたロス食材も入るので、味も内容も毎週変わるのですが、そこはさすがです。きっちり仕上げて頂けました。
ですが、新しく赴任してきた調理長がそのメニューを一度食べて、こう言いました。
「今日で賄いカレーは禁止だ」
突然のカレー禁止令はかなりの衝撃でしたが、のちに語るその理由は納得ずくのものでした。
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1、店が臭くなる。
カレーを仕込んでいる間、賄い後、店内にはカレー臭が立ちこめます。これは和食系のお店ではかなり致命的です。そしてスタッフはそれに気付きにくいんですよね。
2、料理人が考えなくなる。
古い考え、と言われるかも知れませんが、賄いは若手調理人の腕試しの場。一つの食材をどう調理するかが毎日の修行になるし、いかに材料費を安く抑えるか、原価の勉強にもなります。調理長曰く、たまご一つとっても、焼く、茹でる、あげる、生のまま、泡だて、蒸すなどなど、やろうと思えばそれだけで1ヶ月分くらいのバリエーションはあるらしいです。しかも卵一個の原価なんてたかが知れてるし。
安易にカレーにしてしまうと、若手が楽をすることばかり覚えるので、良くない、との事でした。
3、味覚が鈍る。
カレーのスパイスの刺激は、その後の調理人の微妙な出汁の調整や、生魚の鮮度の見切りに影響を及ぼすので、これも調理人には影響は良くない、との事でした。
いやいや、なんて頭の固い…って思う方もいらっしゃるかも知れませんが、私はこれはこれで大事な事だと思ったんですけどね。
禁止令が出た後、一度だけ賄いにカレーが出た事がありました。年度の営業最終日、次の日から休みだからと、調理長自ら。いやー去年食べた食事の中では一番の美味さだったなぁ。
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