従業員による未払金請求を防ぐには、まずは待遇改善と、知識を学ぶ。

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さて、世の飲食業が恐れ慄く賃金の未払金請求ですが、対応で一番大事なのは、「法律通りにちゃんとやる」これが一番です。

一番ありえない対応が、

「従業員と密なコミュニケーションをとって、信頼関係を築き、後々訴えられない様にする。」

という、一番お金がかからないので、ついつい経営者が安易に思いつきそうな考え方ですが、これは早い話が従業員にあるべき待遇を隠し、誤魔化し、情に訴えて黙らせるというある意味一番タチが悪い対応ですね。

そもそも、いくら密なコミュニケーションを、と言っても何をするのでしょうか?面談?、ミーティング?仕事後の飲み会?

従業員も人間です。中にはそういうお仕着せのコミュニケーションを苦手とするスタッフもいますし、何より「後々訴えられない様に」という下心、それを隠したまま従業員と楽しく会話したり、飲みにいけますか?

ちゃんと法律を理解して対応すればそれほど難しく無いし、コストもそれほど掛かりません。代表的なものとしては、

1、 時給は1分単位で計算。

企業によって色々でしょうが、15分単位の所が多いかもしれません。未だに30分単位の所もあるみたいですが。例えば15分単位だとすると、21時上がりのスタッフが21時14分にタイムカードを切ると14分はサービス残業になりますよね。これも積算されていくと、1年で相当な時間数になります。タイムカードのデータは残りますので、ここは1分単位の計算が妥当です。

勿論、会社のシステム上すぐには1分単位にできない場合もあるでしょうが、チリも積もればです。そもそも、飲食業は時間丁度に仕事を切り上げるのが難しい業種です。

常連客の相手もしなくてはなりません。時間だからじゃあ、という訳にもいきません。次の日の仕込みだってそう。時間通りに翌日使う煮物に火が通って、しかもそれが冷めるとは限らないのです。

2、 サービス早出の廃止。

サービス残業が問題化してすぐ、このサービス早出が横行し始めています。例えば本来の出勤時間が9時なのに、慣習で8時30分には店に入って調理場のスタンバイなどをさせるケースです。そして9時になったらタイムカードを押す。

とかく飲食業にはあるあるのパターンですが、勿論違法です。

「職人てのはサラリーマンじゃねえんだ!そうやって誰よりも仕事を覚えるもんだろうが!」

何て声が聞こえてきそうですが、私もそう思いますが、だったら出勤時間を早めてその分の給与を払えばいいだけの話です。でも、そうすると一ヶ月トータルの労働時間が増えてしまいます。いかに一人に仕事を負担させず、他のスタッフに仕事を分配するか、職人さんにも労働監督的スキルが必要とされてきますね。

3、 着替えの時間も労働時間。

この話を聞いた時驚きました。でもこの件で裁判になったケースでも企業側にその時間分も賃金を支払う様裁判の結果が出ている様です。ショッピングセンターで着替えのロッカーが思い切り店から離れていると、その移動時間も労働時間だそうで。

この対策については、「移動時間、着替えの時間は〇〇分以内で」という店のルールを作成するしかないようです。勿論30秒で、とか無茶な要求は今度はパワハラになるのでしょうか。5〜10分以内ぐらいが妥当でしょう。これが出来るかどうかも将来の昇給条件に入れておけば万全では無いでしょうか。

4、 社会保険の加入。

次の要件をどちらかを満たせば、パートアルバイトでも会社で社会保険に加入させる必要が出てきます。

・年収130万以上

・一週間の所定労働時間、及び1ヶ月の労働日数が正社員の4分の3以上

これに当てはまらない場合でも2016年10月より対象が拡大しました。

・週20時間以上

・賃金月額8万8千円以上(年106万円)

・一年以上の継続勤務

・学生以外

・従業員数501名以上の企業(それ以下は労使合意があれば)

これらを全て満たせば、社会保険の支給対象です。ただ、労働時間については繁忙期などでたまたま超えた場合は対象外のようですが。

まぁ、学生さんや主婦の方でここまで稼ぐ方は稀で、むしろご主人や親御さんの扶養の範囲内で働きたいでしょうから問題は無いでしょう。問題はいわゆるフリーターさん達ですが、そこは四の五の言わず、社会保険に加入させましょう。

と、ここまででまずは賃金分です。

「こらこら!目茶苦茶コスト上がっとるやないか!」

というツッコミがくるのは承知です。そりゃそうです。今の待遇に全てプラスすればそうなるのは当たり前です。

ただ、コストアップ分についてはそれ以降の採用条件を見直したり、もう一度見お店のオペレーションを見直して生産性を上げるいいきっかけになると思います。

料理の仕込みについても、今や冷凍技術もかなり進歩していて、しかも安価になってきています。それらの見直しや改善は、じつはこういった危機的状況にならないとなかなか人間本腰を上げません。

従業員を誤魔化して、最低の待遇で人員不足に悩みながら非生産的な仕事を続ける未来と、従業員の待遇を改善しながら、店が効率化していく未来、どちらを選ぶのでしょうか。

なんにせよ、「人」がいないと成り立たない私たちの商売ですし、かつての仲間に後で訴えられるなんてそんな人生は素直にやだな…。

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