飲食店 ちょっといい話1

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うーん・・・・。
ここのところ暗い話ばかりアップして来たので、今回は閑話休題。
少しいい話を。
週に3日くらい通ってくれる年配の女性客がおりました。
おそらく60代を少し過ぎた辺りでしょうか。しかしながら背筋もぴんと伸びていて、身に着けているものも、派手さはなく、上品な感じのお客様でした。
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その方は、いつしか従業員の間で陰では「マダム」と呼ばれ(失礼な話ですが)、いつの間にかすっかりなじみの顔になり、来店するたびに私も世間話をちょこちょこするようになっていきました。
食べるものは大体決まって「焼き魚の定食」で、たまに刺身系を頼みますが、まぁ、大体同じもの。いつもいらしてくれるので、こちらも時々ですが、山菜の季節には天ぷらを少しサービスしてみたりとか、新商品のデザートが出来たときには、さりげなくサービスでお出しするような仲になりました。
ただ、いつも思うのは、ほとんど来店は1人で。ごくごくたまに友達(らしい)とご来店。仕事をしている訳でもなさそうなのに、なんで度々街に出てきてうちの店なんだろう、それが不思議でした。自分の店を悪く言うわけじゃないのですが、もっとその人に相応しい「高級店」ならいくらでもあるのに。
そんなこんなで数年が過ぎ、私も人事異動となり、その店を去ることになりました。最後の日に、丁度「マダム」がお見えになったので、その時に長年の疑問を聞いてみた。あ、ちなみにこの頃はさすがに彼女の本名位は知ってましたよ。
すると、その方は遠くを見るように話してくれました。
「8年前に、よく亡くなった主人と良くこの店に来ててね。主人がこの店をあまりにも気に入ってるものだから、私も好きになったの。その頃から私は焼き魚定食ばっかり。主人は刺身定食がいつものパターン。その頃は店長さんもいなかったわよね。主人がいなくなった後もなんかそのパターンが止められなくて。でもね、私が病気になるか、この店の味が変わったら、ここに来るのは止めようって思ってたの。でも、相変わらず元気だし、店長さんもこのメニュー、変えないしね。」
予想外の重たい話に、気軽に聞いてみた自分が恥ずかしくなった。
「店長さん、新しい店に行ってもがんばってね。それと、いままでこの店の味を変えずにいてくれてありがとう。きっと主人もそう思ってると思います。」
泣きそうになった。

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何気なくいらしてくれるお客様には、それぞれの想いと、それぞれのこだわりがあるようです。毎日同じ仕事をしていると、いらしてくれるお客様は一緒じゃないのに、いつしかそれを忘れている自分に、今もこのときのことを思い出すと気づかされます。
お客様は神様です。いや王様です。どこかのコンサルタントがそう言ってましたが、私は思うのです。
「お客様も人間です」

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