久兵衛の訴えは判るような気がする。飲食店は場所が大事。

こんにちは。当店にご来店いただき誠にありがとうございます。

 

先日、ネットニュースを騒がした、老舗の寿司店、久兵衛の移転問題、結構大きく取り上げられて、ネット上のニュースに対するコメントは、どちらかと言うと久兵衛側に否定的なコメントが多かったですね。

 

事の発端は20199月の開業を目指して改装中のホテルオークラですが、それまでメインエリア、というか一等地で長年営業していた久兵衛ですが、改装に伴い、メインエリアではなく、別棟の場所をホテルオークラ側から指定され、それまで久兵衛が営業していたメインエリアに久兵衛から独立した者が立ち上げたお店が営業すると言う。

 

久兵衛側は、「50年も一緒にやってきたのに、これは片隅に追いやり排除しようとしてる!」とホテルオークラ側に権利侵害と信用を傷つけられたと、損害賠償請求の訴えを起こしたわけなのですが・・・・。

 

とにかく、ネットでは、

「有名店だからって調子に乗ってんじゃないの?」

「いくら老舗だからって本当に腕があるならどこでも出来るでしょう?わがまま。」

「ホテル側がどういう店を入れるのかはホテルが決める事。いやなら出て行けばいい。」

 

と、これが世間の共通見解としたら、今回の件は、久兵衛側が一方的にわがままな要求をしている!と言うイメージのニュースになっているようですね。

 

 

確かに、ニュースになってまで訴えるのは、かえって今回の様にマイナスイメージになってしまうので、結果としては良くなかったと言えますが、飲食店、だけではないですが、立地はお店を運営する上でとても重要な、下手すればその場所を見誤ると、その後、悲惨な結果が待ち受けていますので、話はそう簡単ではないと思います。

 

 

立地とお店のコンセプトのミスマッチ、これで撤退していくお店は私たちの周りにも実は多くて、特に個人店や、小規模の多店舗展開しているチェーン店にその傾向があるようです。例としてあげると、

 

・全くの住宅街の裏側に隠れ家的な居酒屋

当然近所の人しか来ません。いくらそれが強力なリピーターだったとしても、知り合い、近所づきあいだけでは売上は高が知れています。よっぽど全国的に腕が知られている料理人がいるのなら別ですが。

 

・官公庁街のど真ん中に接待向けの和食屋

一見よさそうな立地ですが、実際は今や官官接待や談合には人の目が厳しい世の中です。むしろ接待場所にはビジネス街を離れる傾向があるのは当然。かえって目立ちすぎるので使いにくい。

 

・歓楽街におしゃれカフェ、イタリアンなど。

意表をついて目立ちそうですが、本来の目的とかけ離れた場所。昼は人気の無いうらぶれた街で誰も歩いてません。夜は騒がしくてせっかくの店の雰囲気が台無し。

 

・観光地なのに食べ放題

観光地で求められるのはその土地でしか食べられない体験的食事。コスパやリーズナブルはむしろ求められていない。岩手のわんこそばは別。あれはそういうものだから。

 

・銀座、麻布の一等地で1100円台の寿司店。

これもその地域で求められているニーズは、安い、美味い、ではなくて、ステイタス的な食事。もっとも、低価格帯のお店でこの辺の地代や家賃を賄うとしたら、相当な回転数じゃないと無理な話なのですが。

 

 

個人店でない、所謂大手チェーン店はこの立地の重要性を良くわかっていて、その為新店オープンの際には入念な立地調査が行われ、商圏人口、交通量、地域のニーズ、周辺店舗の様子などを調べた上で初めてゴーサインが出ます。

 

「いや、腕があれば、接客力があれば充分裏通りの立地でも繁盛店は作れる。」

 

という飲食業の社長さんのインタビューもたまに見かけますが、残念な事に、そう言ったお店の殆どが、取材時には繁盛しているけど、オープンしてせいぜい2,3年といった所でしょうか。10年もすれば周りの環境も変わり、自慢の腕や接客力は店長、調理長が変わっていきます。果たして10年後もあるでしょうか?

唯一つ変わらないもの、それは店の住所と看板。だから立地は重要なのです。

 

今回の久兵衛がこだわった立地、それは50年も同じ場所で続けた久兵衛が、その立地の重要性を知っていたからじゃないでしょうか。いくら知名度があっても、地方都市の商店街の片隅で、おまかせで数万円する寿司が売れるかと言えば、それは無理ってものです。あの場所だからこそつけられる価格、ゆえに提供できる料理、そこにこだわれば、移転を反対したくなる気持ちもなんとなくわかるような気がします。

 

 

それでは今日はこの辺で。ご来店ありがとうございました。