続 食中毒クレーム2

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さて、悪夢のような電話の主は、最初は紳士的に、しかし内に秘めたその怒りは青い炎のように燃えていました。
「先週そちらを利用したものですけど、責任者と話がしたい」
全くいい予感がしない定型句です。もうこれを聞いただけで、その保留されている受話器から逃げたくなります。
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案の定、金曜日にこの店で食事をした30名のうち数名が、ひどい下痢と嘔吐に悩まされた。これはどう考えても食中毒だろう、どうしてくれるんだといきまいておりました。
「おつらいお気持ち察します。さぞ大変だったでしょう、病院には行かれましたか?」
何気なく相手を気遣ったつもりが、怒りの青い炎を大火事に変えました。
「あんた、誰に物言ってると思ってるんだ。こっちは医者なんだよ。プロなんだよ」
なんてことでしょう。よりによって体調を崩したのは医者。しかもその大きな総合病院の院長先生で、その子分的存在のお医者さんがクレームの電話を入れてきたのでした。
最も、半分くらいは上司にポイントを稼ぐための訴えなんでしょうが。
こうなると、「こちらで原因を調べるんでお時間を頂けますか?」と言っても、
「お前ら素人が何をどうやって調べるんだ!プロが症状を見て食中毒って言ってるんだからこれは間違いなく食中毒なんだ!」
と、とりつくしまもない。だって相手は医者だもの。

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結局その電話では何一つ解決策どころか、相手の要求すら引き出せなかった。しかも、
「この件についてはそっちの出方次第ではマスコミにリークする」
と、きっちり脅されてしまいました。
さぁ、もはや得意の「同調トーク」術も使えません。すっかり手詰まりになって本社にお伺いをしてみましたが、
「なんで大多数の宴会に生牡蠣なんて出すんだ!少し考えれば分かるだろう!」
と、今にしてみれば納得のお怒りなのですが、当時の私にはその危険性も全く理解しておりませんでした。
謝罪にエリア長を連れて伺うも、会ってもくれず、
「お前じゃ話にならない、会社のトップをだせ!」
と、それはそれは強気の訴えです。
そうは言われても、こちらとしては社長に直接クレームが行かない為に私たちがいる訳なんですが、
「はい、それでは社長、よろしくお願いします」
と、簡単に言えないのがサラリーマン店長なのですよ。
それからやり取りは1週間ほど続きました。
あちらからの要望は、とにかく、
「社長を出せ」
の一点張り。社長が出て、土下座でもすれば、上司に顔が立つのでしょうか。そしてこちらも、
「私たちが対応を任されておりますので、一度お話させていただけるお時間を下さい」
と、言うしかない膠着状況が続いた。
次号に続く

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