悲しい現金事故その6

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さて、いよいよ決着です。

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そして尋問です。前日警察が来たと言うプレッシャーと、大体の状況証拠が揃っているのでこちらが有利なはずなのですが、だからと言って、

「お前がやったんだろ!」

とは言えません。万が一、複数の犯行、あるいは外部の犯行であれば、その証拠は無意味になるわけで、それが警察が踏み切れなかったアキレス腱でも有る訳で。下手すればこちらが名誉毀損で訴えられます。こちらとしてはせいぜい、

「・・・と証言と証拠がある以上、君が疑われるのは仕方が無いと思う。それで、なにか心当たりはないか?」

と、回りくどい事を聞くのが精一杯。当然、知らぬ存ぜぬで、かわされます。

平行線をたどった尋問はなにも得られないまま終わったので、翌日の朝礼で一か八かはったりをかますことにしました。

「昨日の警察の捜査の結果、被害にあわれた従業員の財布からその従業員以外の指紋が検出されました。後日、全員の指紋検査が行われますのでご協力下さい。」

勿論嘘です。事実警察の方にも、まず指紋は出ないと思うし、指紋採取には特別な薬剤を使うから、その財布は台無しになるから、と言われていたので。

「こちらとしても、犯人とはいえ、その方の将来を考えると、警察に突き出すより、金銭を返却してくれれば不問にしてもいいと思う。本日まで待つので、もしこの中にいるのであれば、後で私の携帯に連絡を下さい。」

これで犯人の出方を待ちました。

すると、翌日、全く関係の無い更衣室の一角から、

「大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ございません」とだけ書いた手紙と、全額ではありませんが、お金が入った封筒が出てきました。そして、一番最後に尋問したフリーターは突然来なくなりました。

その封筒を細心の注意を払って指紋をつけないように衛生手袋をはめ、警察に持って行って調べてもらいましたが、指紋は出ませんでした。きっと同じように手袋をはめていたのでしょうね。そして、折角たった一万円ですが、戻ってきたそのお金は証拠品としてしばらく戻ってきませんでした。

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もやもやしたまま、グレーな形での解決となりましたが、それ以降、従業員は財布を事務所に預けるようになり、金銭事故は姿を消しました。レジでの金銭事故でもお話しましたが、私が思うに、この手の事故は、

「犯人が悪いのではなく、環境が悪い」

と思います。簡単に犯罪に手を染めやすい環境にしておいた、管理者の責任だと思います。それだけ、お金の魔力とは危険なものであると言えるのは、テレビニュースの業務上横領のニュースが絶えないことを見ても、間違いないのではないでしょうか。

ちなみに、後日談ですが、その犯人とされた従業員の前職場の方がうちの店に面接に来ました。どんな人だったか、と聞いた所、「よくわからないけど、確か金銭トラブルで辞めた」人だったらしいです。

さらに、いきなり辞めたので、給料を差し押さえにして、そこから被害者に損害補填できないかと会社に聞いてみた所、残念ながら、現行の法律上はそれは出来ない、との事でした。法律って難しいですね。

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