悲しい現金事故その4

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悲しい現金事故はレジばかりではありません。従業員同士、これが一番店の雰囲気が悪くなります。そしてその現場は大体にして「従業員更衣室」がその舞台になります。

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あの事件は全ては私の現金管理に対する認識の甘さと、オープンしてから10余年、従業員更衣室について現金盗難事故が起きてない事実を、「いい人の集まり」と過信してしまった私の危機感の無さが生んだ悲しい事故でした。

その店には、約6畳程度の従業員更衣室が完備されており、一応の鍵付のロッカーがありました。ただ、そのロッカーの数が明らかに従業員数に対して少なく、一つのロッカーを2,3人で共有するしかないと言った状況でした。

そんな状況ですので、ロッカーの中に入れられるのはせいぜいその日着てきた私服と、出勤前の制服ぐらいでした。結果、手荷物はロッカーの中に入りきらず、財布と共に床やら棚に放置されている状態でした。

一応、事務所で財布や貴重品に関しては預かる、といったルールがあったらしいんですが、誰一人として預ける人はいませんでした。

なにより、これだけ管理がずさんな状況でも今まで一度も従業員室での盗難事故は発生していない、と言うくらい、従業員同士、「お互いがお互いを信頼しあっているいい雰囲気のお店」と言うのが従業員自身の自慢でもありました。今にして思えば、それは幻想でしかなかったと言う事なんでしょうが。

しかし、事件は突然起こります。第一報は入店したばかりのフリーターからでした。

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「店長、なんだか今日出勤して来た時に財布にあったはずの一万円札が無くなってるんですが」

人を第一印象で決めるのは良くないとは重々知っているつもりなのだが、彼同様、私も赴任してきたばかりで、正直な所、頭髪は派手すぎるくらい金髪に仕上げ、毎日どこかのチンピラかと言わんばかりの風体で出勤してくるし、第一勤務中の言葉使いも乱暴な部分が多く見受けられる彼をあまり好きではなかった。だから、

「それが事実なら問題だけど・・・、記憶違いって事は考えられないの?」

と、半分は信用しておらず、それほど親身に話を聞いていませんでした。

「間違いないって!多分だけど。しかも以前も財布の金が少なくなっていたような気がした事があったんだって!俺はもうこの店の人間が信じられないから、もうこの店辞めたいんだけど。」

憤る彼を一応はなだめてみたが、収まる気配は無く、結局、彼はそのまま店を辞めてしまいました。

翌日、従業員室で金銭の盗難の可能性があった事と、貴重品、財布については事務所の金庫に預けるようにと通達しました。

にもかかわらず、翌日以降も貴重品や財布を預けに来る従業員は2,3人にとどまり、金銭事故の可能性の話もどうやら彼の勘違いであろうと言う雰囲気になりつつありました。

しかし、その安易な発想がさらなる悲劇を呼ぶのでした。

続きは次回。

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