経営者がよく引用したがる“マズロー”の定理、実は給与抑制のための詭弁?

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さて、今日は“マズローの定理”ついてのお話です。

このマズローの定理というのは1943年にアブラハムマズローと言うアメリカの心理学者が提唱したモチベーション理論の事なのですが、ここ数年、やたらとビジネス関連の雑誌に掲載される様になり、飲食店業界では店長教育の一環としてよく扱われる様になりました。

私の会社でも年に一度はこの理論についての説明を受ける事があります。

内容をかいつまんで言うと、早い話が人間の欲求には5段階のステップがあって、一つの段階の欲求を満たすと次の段階の欲求が始まり、その段階を踏む毎に高度な欲求と変化する、と言うことです。

1、 生理的欲求

2、 安全の欲求

3、 所属と愛の欲求

4、 承認欲求

5、 自己実現の欲求

以上が5段階の欲求です。

まず、生理的欲求。

人は食べなくては生きていけません。そこで最低限、まず生き延びられる様に、食事をしたい、眠りたい、この条件を満たそうとします。今の日本では生活保護もあるのでこの段階はほぼ満たされていると言っても良いでしょう。

そして安全欲求。

これは住むところと言えば良いでしょうか。とにかく外敵に襲われない安全な場所を探そうとします。まぁ、家なり部屋なり、ホームレスで無い限り、この条件も満たしている人間がほとんどでしょう。

そして、所属と愛の欲求。

住む所も食べるものも満たされれば、誰かと繋がっていたい、組織に入りたいという欲求が芽生えます。それが言うなれば「職場」であったり、「サークル」であったり

恋人であったりする訳ですね。

で、承認の欲求。

組織や集団の中に所属していると、誰かに認められたい、名誉が欲しいと感じる様になります。よく我々は従業員に対して、ここが大事だと教育されます。この段階が不十分だと、スタッフは無気力になり、他所の仕事を探す様になり、離職率が上がると言われます。まぁ、納得ですね。

そして自己実現の欲求

この段階までくると、自分の能力を駆使して、もっとレベルの高い自分になろうとする意識が芽生えます。職人意識やプロ意識がそうですね。ここまで来たスタッフは、自身で行動し、自分の仕事に誇りを持って仕事をしますので、そう簡単には辞めないスタッフになる、だから店長はいかにここまでスタッフを導くかが重要なんだそうです。

と、ここまでもっともらしい事を書きましたが、何故かこの理論を自分の都合の良い様に解釈してしまう経営者も少なく無い様で、店長サイドが、

「アルバイトの時給を他の会社並みにしないと、人手不足が加速します!」

と訴えても、

「それは低次元の生理的、かつ安全欲求だ。もっとお前らが承認欲求を満たしてやれば辞める人間なんて居ないはずだ!」

と、マズローの定理を盾に、賃上げを突っぱねようとします。この様に、賃上げをしたくない経営者側からすれば、このマズローの定理はとても都合の良い理論の様です。

ただ、それは実は解釈の違いで、マズローは欲求が段階的にステップアップして行くと書いています。なので、低次元の欲求を疎かにしても、高次元の欲求さえ満たせば満足するとは書いていないのです。それに、生理的欲求や安全欲求は現代人はすでに産まれながら満たされているのがほとんどで、言い換えれば現代人の低次元の欲求は「給料が人並み」「生活レベルが平均的」「休みがちゃんと取れる」が最低限で、それを満たしていなければ、次のステップに進むことはいくらなんでも無理難題な訳です。

自分の店の、会社のアルバイト時給は同じエリアの同業種の平均と比べてどうでしょうか?やりがいを与えれば、褒めてあげれば、などと悠長な事を言っていると、4月が来るたびに人が居なくなりますよ。だってどんなに辞めないアルバイトでも、学生なら卒業したら普通は辞めますからね。

それでは今日はこの辺で。ご来店ありがとうございました。

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