無銭飲食 決着

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警察にその無銭飲食を通報すると、程なく二人の警察官がやってきました。
早速形式上の聞き込みが始まり、あえなくその方は警察署におとなしく連行されていきました。
しかしながら、それで終わり、だったらどれだけ良かったでしょう。
私も警察署で事情を聞くべく、その時接客していたスタッフとともに警察署に呼ばれることになりました。
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勿論、こっちも暇ではありません。普通にやるべき毎日の仕事、その私と一緒に呼ばれたスタッフだって、いなくなったらその時間帯は1人分欠員が出ることになります。
ただでさえ忙しい時間帯に二名マイナス。飲食店をやってる人からすれば、それがどれだけ致命的か分かると思います。
緊急事態のメールを流し、急遽休みだったスタッフを呼び出し、警察署での調書作成に協力することになりました。
休暇中の従業員のプライベートと、余計な人件費をかけたにも関わらず、その調書作成の単調なことと言ったらありませんでした。
何時に何を注文したか、何をどれくらい食べたか、2回目の注文は何時何分だったか、そんなもの、伝票を見れば分かるだろうに。どの時点で無銭飲食と思ったか、とか、今の事実を見れば分かるだろうに。それがいくらの商品だったか等、同じ質問を何度も繰り返しされ、なんだかこっちが悪いことをしたようにすら思えました。

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ようやく開放されたのは3時間後、自分たちが抜けた穴を埋めるべく使った人件費はとっくに無銭飲食分を超えていました。
後日になって、警察の方から、あの人が結局留置所送りになった事を告げられた。
意外だったのは、その人の靴下の中に、数千円があって、支払おうと思えば支払えるにも関わらず、本人が頑として拒否した為、無銭飲食が成立した、とのことでした。
刑法のことは良く分かりませんが、警察の方が言うには、その方は数ヶ月前に刑務所から出所した人で、ただ、身寄りも無く、仕事にもありつけなかったので、厳しい冬が来る前に、もう一度、食事と寝床が用意される刑務所に戻りたかった為に、無銭飲食をした、とのお話でした。
飲食代をあくまで請求するかどうか聞かれましたが、正直それ以降の手間を考えると、「もう、どうでもいい」との結論に達しました。
結局、その時の飲食代は帰って来ませんでしたが、そんな事より、日本の闇の部分に触れたような気がしました。
いくら人が足りないと言っても、外国人や高齢者には寛大でも、前科持ちには厳しい現代社会。刑務所を出ても、親戚、家族からは受け入れられない事実。
そして、その人がたどり着いた、社会に戻らないという選択。
飲食店をやっていると、本当に色んな経験をしますね。

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