飲食店店長の東北のお酒、個人的素人レビューその3

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乾坤一 (村田町、大沼屋酒造)

宮城県県南の村田町という所にこの酒蔵はあります。よく先の震災に持ちこたえたな、と思うくらい、よく言えば古めかしい酒蔵がそこにあります。やはり昔の建築物は地震に対しても頑強に造られているのでしょうか。

ここの銘柄「乾坤一」は蔵本さん自ら、「飲み続けられるお酒」というのも納得なくらい、キレが良いからなのでしょうか、なんとなくずっと飲み続けられます。いやいや、他のお酒もそうだろうよ、という突っ込みもあるでしょうが、なんというか、必要以上にお酒が主張しないと言うか、口内に残らないというか、すっと口に入ってすっと消える、で、また飲んでしまうというか。ほら、よくあるじゃないですか、一口飲むとずっと吟醸香やほのかな甘味がずっと居座り続けるお酒、それはそれでいいんですけど、一合飲むともうおなか一杯になりませんか?この銘柄はそうじゃないんですね。辛口のお酒のお手本みたいな感じだと勝手に思ってます。冷でよし、燗でよし、冬季に出回る「愛国」シリーズはお手ごろ価格でおすすめの逸品ですよ。

綿屋(栗原市 金の井酒造)

県北の小さな酒蔵で造られている「キレイ系」のお酒のイメージです。その名の通り、綿のようなふわっとした口当たり、とレビューすればいいのでしょう。飲み口も女性にも受けそうな飲みやすさです。フルーティ、と言えばいいでしょうか。

それがこの蔵の持ち味なのでしょうが、昨今、この手の「飲みやすい日本酒」が世の中に溢れすぎて、一昔前はその飲みやすさが特徴で、珍重されていましたが、今となっては似たようなお酒が多すぎて、せっかくの特徴が埋もれてしまっているのが残念至極です。

ただの純米酒なのに他の純米吟醸レベルの風味と飲み易さを実現した素晴しい酒蔵なのにとても残念です。逆に言うと、昔から同じレベルで同じ品質のお酒を頑固に造り続けているというのは賞賛に値すると思います。

生産量が少ないのであまり関東には出回らないと思いますが、東北に来た際は是非一度飲んでいただきたい銘柄の一つです。

阿部勘(阿部勘酒造、塩釜)

浦霞と同じ塩釜のお酒ですが、浦霞の存在が大きすぎてその影に隠れている感が半端ないのは石巻の墨之江と同じくらいです。

こちらの銘柄でよく目にするのは、純米吟醸系のお酒だったりするのですが、とっても飲み易く、とても丁寧な造りです。なんでこの酒蔵が今ひとつメジャーになれないのかが不思議なくらいです。夏には真っ白のラベルを透かすと金魚が見え隠れする「金魚ラベル」というボトルの美しさで言ったら宮城県ナンバーワンの銘柄があるにも拘らずです。これは確実に営業力の差でしょうね。

ただ、個人的には純米吟醸系のきれいなお酒は海の幸の珍味系には今ひとつ相性が悪いように感じます。珍味系の生臭さが余計に際立ってしまうので。なので、こちらの銘柄には取れたての鮮魚の刺身系と合わせるのが王道のような気がします。

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