悲しい現金事故 その5

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前回の続きです。それにしても、思い出すだけで辛く、あの頃の店の雰囲気はお互いが疑心暗鬼の最悪な状況でした。

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続き

だが、それで終わりではありませんでした。数日後、第二の犯行が行われました。今度は主婦のパート従業員から、15,000円持ってきたうちの10,000円無くなっていると。なにか買い物をした事を忘れていればよくある話なのですが、その従業員は家計簿等もつけているらしく、間違いないと。いよいよ大変なことになったぞ、と思う暇も無く、翌日、学生バイトからも、財布にあったはずの5千円札が無くなっているとの報告があがりました。皆、つい最近店内での厳禁盗難事故の件が頭にあったので、自分の財布の中身を注意するようになったのでしょう、次々とその報告は飛び出し、結局、その2日だけで4件、合計3万円近くの現金盗難事故に発展しました。

上司にこの件を報告すると、当然のことながら、「初動が遅いわ!」と怒られるのですが、全ては私の認識の甘さです。責任を持って犯人探しをする事になりました。

まず、その手口。財布そのものは盗まずに、一部だけを抜き取るやり方。これはもうその場で思いついた犯行ではなく、計画的に、かつ常習的に行われた可能性を示すものでした。おそらく最初のフリーターの事件以前にもあった事が推測されました。事実、従業員一人一人に心当たりを尋ねた所、「そう言えばおかしいと思った事がありました。」という証言が何人からか上がって来ました。その証言を元に、この犯行がはじめに行われた時期の大体の見当をつけました。

次にアリバイ。あくまで単独犯と睨み(というか、複数であればもはやお手上げ)、現金事故があった数日間に出勤していた従業員を絞り込みました。この手順は「レジでの現金盗難」でも使った手法です。これで従業員50人中私を除いて、5人程度まで絞り込めました。ただ、この時点で、5人のうち、1人は私で、2人は被害者。となると、残りは2人。

そのうち1人は勤続10年以上の社員で、もう1人は入店して半年ほどのフリーター。こうなると、どっちが疑わしいかは明白ですが、一応、最初に社員を事務所に呼び出し、尋問をする事にしました。

「俺がやる訳無いだろ!なんだったら今から警察に行っても構わないんだぞ。」

勿論、こちらもそうは思っているのですが、疑われたほうからすればたまったもんじゃありません。一応彼については、出勤日は犯行日と重なっているのですが、彼自身、必ず誰かと一緒の時間帯に出勤してきて、調理場の職人さんは大体同じ時間に帰るので、更衣室での犯行はよほど器用でない限り不可能、という事で彼に関しては、ほぼシロとの見当をつけました。彼についてはそれ以降も、「犯人特定の為だったんだよ」とずっとフォローをする事になるのですが。

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そして、いよいよフリーターの尋問です。しかし、素人がどれだけ追求しても、簡単に口を割るとも思えません。そこで、この時点でようやく近くの交番に通報し、警察の方に来ていただいて、現場検証なりをして頂く事にしました。もちろん、それでなにか判る訳ではなく、当然形だけの現場検証でしたが。やっぱり何かしら盗難事件であるという証拠が無いと、捜査には踏み切れないようです。

しかし、それはそれで効果があり、「警察が入った」と言う事実は、犯人にとって大きなプレッシャーになり、再犯させない効果はあったようで、それから事件はぴたりと止みました。

続きはすいません、また次号で。

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