もったいない日本酒の出し方。日本酒はラベルが命。

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せっかく旅行か出張で訪れた東北。夜はじっくりと地酒や郷土料理、その地方の新鮮な味覚に舌鼓を打ちたいと思うのは間違いないでしょう。特にお酒が好きな方にとっては、米処の国の地酒は旅の楽しみの一つでもありましょう。

にもかかわらず、お店側のちょっとした配慮の無さで、せっかくの地酒が十分なポテンシャルを発揮できずに終わってしまっているケースが少なくありません。例としては次の通りです。

1、 徳利、又はグラスで提供されるが、瓶から注ぎ終わった状態で提供される。

ああ、もったいない。安居酒屋の飲み放題の日本酒じゃあるまいし、結構ハイレベルな日本酒でさえも、ドリンカー、バーポジションと呼ばれる、ビールやカクテル、ハイボールなどを仕上げる場所で、一升瓶から徳利やグラスに注がれた状態の日本酒。

いくらメニューブックに説明書きがあろうと、従業員が説明しようと、その一升瓶のラベルの輝き程説得力のあるものはありません。「田酒」「十四代」そう書かれた一升瓶から注がれるその液体は注がれるたびに注文したお客様の心を掴んで離さないでしょう。

と、いうより、そうしないとそのお酒の価値が伝わらないんです。だって、そうでしょう。よほどの日本酒マニアでない限り、何もラべリングされていないグラスや徳利で、「おぉ!!このふくよかな味わい、なめらかな喉ごし、それでいて鼻腔をくすぐるスパイシーな香り、これこそまさに〇〇だ!!」なんて、なんかのマンガじゃあるまいし、ほとんどの人が初めて飲むお酒、区別なんかつきっこない。

だからこそ、お客様の前で注ぐのです。運よく初めて瓶の封を切る「口開け」に出会えればさらに価値感が上がります。もちろん、わからないからと言って、別のお酒を入れ替えるのは偽装行為ですから駄目ですよ。

2、 悲しい位に従業員がお酒の事を知らない。

急仕上げだったのでしょう、トレーニングする暇もなかったのか、そもそも未成年だから試飲すらしていないのか、させていないのか、「全く」と言っていいほど日本酒の事を知らない。せめて、産地、酒蔵位は答えられて欲しいのと、未成年であれば、「私は飲んだことないんですけどぉ、お父さんがこれが甘口で飲みやすいって言ってました!」位の事は嘘でもいいから返してほしいですね。

特に今は人手不足なので、外国人スタッフや高校生スタッフに頼らざるを得ない状況のお店も多いので致し方ない所ですが、日本酒を活かすも殺すもお店次第です。ワインにソムリエがいるように、日本酒専門の提供スタッフを置いてもいいと思います。とはいってもその作業だけをさせるわけでは無くて、通常時は普通に料理提供をしながら、お酒のオーダーが入った時だけ日本酒の提供をさせるといった具合で十分です。

当店の場合でもこの専属のスタッフを自分以外に置いたところ、最初は知識不足で苦労しましたが、日を重ねる毎に本人もやりがいが出てきたのでしょう。私よりお酒に詳しくなりました。また、周りのスタッフにもいい影響が出てきまして、それまで日本酒に興味を持たなかったスタッフまで、興味を持つようになりました。

詳しい説明書きが書いてあるメニューもいいですが、地元の人間が自分の言葉で説明するうんちくには叶うはずがないですよね。「人」を定てる意味でも、説明できるスタッフを育てましょう。

3、 あまりにも日本酒のチョイスがマニアックすぎる。

マニアックか、そうでないかの基準は非常に曖昧ですが、基本的にgoogleか何かで「〇〇(地名)のおすすめ地酒」で出てくるものは押さえたい所です。そこに店主の思い入れのある、知る人ぞ知るあまり世に知られていない日本酒を入れるのは、お店の差別化という意味ではアリだと思います。

問題は、その思い入れが強すぎて、誰も知らないような銘柄ばかり揃えてしまい、「味には絶対の自信あり!有名なお酒は名前だけなのさ!」と少し勘違いしちゃってるケース。

日本酒でも和牛でもそうですが、「名前」ってとても大事。みんなその名前がついている物を、飲んだり食べたりした「経験」が欲しいのですから。いくらあなたが選んだ日本酒、食材が優れていても、その「経験」へのニーズには叶わないのです。

以上3点が、良く見受けられる残念な日本酒の提供方法でした。本当に、その素材を活かすも殺すも、お店、店長次第だと思います。

それでは良い店長ライフを!

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